2009-11-16から1日間の記事一覧

吉行淳之介  「手品師について」  Ⅱ

さて前回、この作品の少年の持つ自意識について書いてみた。ここで、この小説には一つの謎が浮かぶ。それは、小説家倉田は、なぜ川井と関わりを持つのかということである。少女にとって川井はお客さんであるし、同僚にとっては仕事仲間である。しかし、倉田…

吉行淳之介「手品師」について  Ⅰ

この小説は、倉田という小説家が語り手であるが、語られているのは川井という少年である。その筋は、ある酒場で、小説家倉田は、ファンであるという少年と知り合い、嫌悪感を抱きながらも、手品などをみせられる仲になる。少年は、その酒場の少女に惚れてい…