チャンピオンたちのトレーニング。

昔、なんとなくトレーニングをしようと思っていた時がある。

水泳は三回で終わり、ジム通いは一月続き、ランニングは二週間続いた。

たばこは三年続いている。

そういうものだ。ハイホー。

とまあ、なんとなく変わった文体で書いてみたが最後にランニングをしている時、不思議なものを見た。

よく晴れた日で、私は早くもへばっていた。

道にはおじいさんと孫と思しき、まだ二三歳の男の子が散歩していた。

そこに一羽のカラスが。

おじいさんは「ほら、あれがカ・ラ・スだよ。カラス。」と名前を教える。

しかし、孫は「カアー。カアー。」とカラスになろうとしていた。

かなり粘り強いのか、おじいさんはめげずに「カラス」を教え続けていた。

私がこの光景を見守ることができたのは、疲れてウォーキングに切り替えたときだったからだ。

何でこれが印象に残っているかと言えば、言葉というのは不思議だなぁなんて考えていたからである。

カラスが鳴いている状況を伝えるときに、「カラスが鳴く」という言葉と「カアー、カアー」だったらどちらがうまく伝えられるのかななんて考えていた。

あたりを一周して戻ると、男の子はいまだにカラスで、おじいさんはいなくなっていた。

そういうものである。